紛災時救急救命講習会。TCCCは、紛災(Conflict-Induced Disaster)における負傷者に対して、
「いま自分ができる最も効果的な救護」を市民が実行できるように構成した救急救命講習です。
止血、気道確保、搬送、バディ救護などの最重要項目に絞り、
軍事・災害医療の知見を市民向けに縮約した内容で構成されています。

1:コース概要(Overview)
TCCCは、紛災時に発生しやすい外傷に対し、
市民が「その場で命をつなぐための即応措置」を習得する講習です。
扱う領域は以下の通りです。
- 大量出血の緊急止血
- 気道管理(Airway Management)
- 安全な搬送方法
- バディ間の救護分担
医療資格の有無に関わらず、市民が最低限理解すべき救護行動を、
専門性を落とすことなく、安全に再編集したコースです。

2:なぜ救急救命教育が必要なのか(Context & Rationale)
日本の一般救急講習は「平時の環境」を前提にしています。
しかし紛災下では環境が大きく異なります。
救急車が「来ない」「来られない」
- 道路状況の悪化
- 通信断絶
- 複数同時負傷者の発生
出血は“数分以内”に命に関わる
- 大量出血は3〜5分で致命的となる可能性
- 市民の初期対応が生存率を大きく左右する
「自分たちだけで動く時間」が必ずある
- 救助が遅れる・到着できない
- 周囲の状況が危険で医療者が近づけない
- 搬送を自力で行う必要がある
- そもそも周囲に医療従事者がいない
本来のTCCCは軍事医療基準ですが、
最も重要な要素は、むしろ市民にも必要な内容です。
CPI版TCCCは、
「紛災時に生き延びるための市民救護モデル」として再編集しています。
3:基礎教練(Fundamental Training)
まずは「命に関わる行動」を、優先順に習得します。
主な内容
- 出血の種類と危険度
- 止血帯(ツアニケット)の使用
- 直接圧迫・圧迫点の理解
- 気道閉塞の見抜き方
- 呼吸の有無の判断
- 安全な姿勢管理(リカバリー・ポジション)
- 負傷者の観察ポイント(MARCH法の市民版)
目的
どの負傷を「最優先で救うべきか」判断できる状態をつくること。
知識ではなく、
手が動く・判断できる・迷わない
ことが基礎教練の最重要ポイントです。

4:応用フェーズ(Applied Care / Buddy Rescue)
紛災の“現実的な状況”を想定した実践フェーズです。
出血コントロール(Bleeding Control)
- 高緊張時の止血操作
- 複数部位の同時管理
- ツアニケットの再調整
気道・呼吸の管理
- 簡易的気道確保
- 姿勢による呼吸補助
- 意識レベルの変動への対応
搬送技術
- 一人搬送・二人搬送
- バディ搬送(役割分担と合図)
- 狭所・階段での移動
- 即席担架の作り方(ロープ/衣服利用)
紛災特有のシナリオ演習
- 危険区域からの救出
- 不安定地形での安全確保
- 戦術的な移動ルートの選択
- 現場の危険が続く状況での救護判断
応用フェーズの目的は、
「救護と安全移動を同時に成立させる力」を育てることです。

5:受講条件・実施要項(Requirements)
対象・持ち物・形式
- 対象者:一般社会人(医療知識不問)
- 持ち物:動きやすい服装、筆記用具
- 講習形式:室内講義 → 実技 → シナリオ救護
使用道具・安全規約・申し込み
- 扱う道具:市民向けTQ、包帯、三角巾、簡易担架
- 安全規約:医療行為に該当しない範囲で指導
- 申し込み:CPI Academyページより受付
本講習は医療資格取得講習ではなく、
「生存率を高めるための市民向け救護スキル」
を目的とします。
6:指導協力団体(Partnership & Supervision)
TCCCは、救急・災害医療・戦術救護の専門家による協力のもと、
市民向けに最適化されたカリキュラムとして構成されています。
災害・戦術救護の専門家(Tactical Emergency Care Specialist)
災害医療、外傷処置、戦術救護(Tactical Emergency Casualty Care)に関する実務経験を持つ
医療専門家の協力を受けています。
外傷評価、止血技術の最適化、気道管理プロトコル、
危険区域での救護判断、バディ救護の安全基準などの国際的知見を市民向けに再編集し、
CPI版TCCCのカリキュラムに反映しています。

